今夜のねぐらは明るいうちに・・・・・

遅めの出発といっても6時ちょっと過ぎだったぐらいだと思います。私たちの旅のパターンは午前中にできるだけ距離を稼いでおいて、午後からはその日の状態により前後しますが、日帰り温泉を探して入浴して、次にスーパーを探してその日の晩酌のおつまみを調達し、まだ陽のあるうちにその晩の寝床をきめて後はのんびり過ごし、夜はやることもないので早めに酒を喰らって寝てしまうというジツに単純なものであります。
寝床を明るいうちに探しておくというのは、夜中になると暗くてなかなかいい場所を見つけられないということがあります。今回は初めての場所でないからだいたいの見当をつけることができますが、大抵の場合は初めてのところばかりですから、自分がどんな場所にいて周辺がどのようになっているかを把握しておかないと結構不安なものであります。

かなり前の話になりますが、会社の同僚10人ぐらいで房総の御宿というところにキャンプにでかけました。会社の仕事が終わってから出発したものですから到着した時はかなりの時刻になっていたのです。別にキャンプ場を予約していったわけでなく、適当な場所があったらそこにテントを貼って酒喰らって寝ようというジツにいいかげんで杜撰としか言いようのない計画だったわけであります。
今は、どうかしりませんが房総なんていうところはジツに辺鄙な場所でありまして、街頭などというものはほとんどなく日が落ちれば漆黒の暗闇のなかで海の近くらしいというぐらいしかわかりません。
昼間の仕事の疲れと空腹と早く酒呑みたいという複合条件が重なりましてロクに周辺の調査などすることもなくテントを張りまして、とにかく、冷たいビール、ビールとなります。疲れた体にひとたびアルコールが入りますと、若さも手伝い元気になります。そうなると手のつけられない大宴会に発展していくのがバカ集団の常であります。
当時カラオケなどというものは影も形もなくて、男同士の宴会となるとアカペラの唄の合唱となるのが正しい姿なのです。少なくても私はそう思っていました。
そのバカ集団のなかに漁師あがりもしくは漁師の小倅などというのが数名おりまして、またこいつらは唄が抜群に旨いのであります。おもに民謡でありますが、ほとんど私の知らない漁の唄でありますが、声もとおるし聞いているとまるで自分も漁師になったような錯覚さえ覚えてしまいます。
「あいずだよ、あいずだよ、くじらのあいず」
最初に聞いた時に福島県の会津地方の唄かとおもったけど「合図だよ、合図だよ、鯨の合図 燈明崎からのろしがあがる・・・」そうです、森という男だったけど和歌山の漁師あがりでありました。
しかし、あいつが唄う唄はしみじみいい歌でありました。
ま、そんな調子で大騒ぎして、翌朝当然二日酔いでありますけど、テントの中で日がかなり高く上がっているのを確認して、宿酔いの頭をかかえておそるおそるテントから顔をだしてみると、そこは、ななんと人さまの大きな屋敷の中であったのであります。
このバツの悪さは今でも思い出すたびに顔が赤らんできます。それから今さら遅いとは思いますが、そうーっとなるべく物音立てないように海岸のほうに数十メートル移動していったのであります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA