朝食を摂るのにちょうどいい場所が

夜が明ける時の展開はジツに素早いもので、東の空が白み始めるまでは、かなりもどかしいものなのだが、ほんの少しだけ申し訳程度に薄明るくなったと感じるまもなく強烈なお日様が顔を出し始める。旅先ではこのほんのわずかな時が私の一番好きな時間でもあるのです。

そうしてすっかり周囲が明るくなるのと同時に、普段は何に使っているのかわからないような大きな駐車場が海べりに姿を現しました。
駐車している車も見当たらず、入口側にトイレもあるようなので、ここで朝ごはんを食べる場所に決めました。海をみながらのんびりと朝の空気やら陽の光を楽しみたかったので、イスとテーブルを外にだしてセッテングをして、偵察を兼ねて先程目にしたトイレに向ったのでありました。
全体で長さが400メートルほどもあるような駐車場の真ん中に陣取ってしまったものだから、トイレまでの距離も結構ありましたが、ま、朝の散歩だと思えばなかなかいいではないかと思い開放感に浸りながらトイレを済ませて海岸のほうに目をやってみると、そこには大型のテントとタープを広げて寛いでいる若者が数人たむろしておりました。様子を伺っていたら、どうやらサーフィンをやりにきているらしいのであります。どうみたって波一つない静かな海べりでサーフィンなんかできるのかなという思いがかすったのですが、街の中をサーフボードを載せて意味もなく走り回っている連中に比較したらかなり許せる範囲なんだろうし、波の高い時もあるのだろうと一人納得させてしまった。
顔を洗ったり、歯を磨いたりしてから海岸に降りて潮の香りを楽しみながら車に戻ったら、妻はすでに起き出しているみたいでテーブルには淹れたてのコーヒーが2つ用意してあった。
周囲には妻の姿が見当たらなかった。私が一段下になっている海岸近くの小道をぶらぶらしながら帰ってきたので妻がトイレに向かうのと入れ違いになったらしいのです。

彼方の稜線に小さなトンビの影がゆるーく輪を描いて音もなく飛んでいる姿が目に入った。車の全てのドアを開け放ち、寝袋を裏返しにして干して、ベッド状にしてあった後ろ座席を元に戻し、簡単に荷物の整理をした後に、私は深く椅子に座って両足を投げ出して、まだ熱いコーヒーに口をつけたのでした。

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