日本の男は総じて照れ屋であるし、素直ではないのだ

昨日自宅を出て新潟県あたりをうろついていたのだが、ずーっと良い天気で日本海の色もさわやかな色でありましたが、県境超えて山形県に入ったあたりから空模様はアヤシクなりつつあった。

まだカーナビの目的地は「酒田市の代表的な場所」に設定してあった。この「代表的な場所」とはどこなのかといいますと、いつも途中で設定し直してしまっているので最後まで走ったことが無いのですが、たぶんここでは酒田市役所を指しているのだと思います。
別段、酒田市役所に行きたいわけではないので、そろそろ設定を変更しておかなければいけないのだが、今回はこれといって最終目的地を決めているわけではなかったので困ってしまう。
そうだとりあえず庄内平野から眺める鳥海山を妻にみせておこうとだけ思った。
私は秋田でお百姓さんの真似事を少しだけの期間やっていたことがあるので、結構庄内地方を走り回っていたので妻よりは詳しいのであります。

あれはいつの頃だったか定かではないのですが、春の田植えの時期にたぶん秋田に向っていたのだと思います。庄内平野は昔から日本でも有数な米どころであります。それらの広大な田んぼが田植え前の代かきも終わり、満々の水をたたえて大きな鏡のようになっています。
そこに、まだところどころに雪をいだく雄大な鳥海山が、映っているのです。広大な鏡のような庄内平野に雄大な鳥海山が逆さ富士よろしく逆さ鳥海山となっている光景は今も忘れることができません。
おそらくもう2度と見ることはできないでしょうけれども、せめて鳥海山ぐらいはみせてやりたいなと思ったわけであります。

ある時、妻と同じような旅をやっている時に
「お父さんは、いつも一人であっちこっち走り回っているけど、ああ、こういう景色を妻にもみせてあげたいなと思ったことはない?」
と妻に聞かれたのですが、
「そんな事思ったこともないなぁ」
「・・・・・・・・」
などという会話をしたことがあります。その時はいつも自分だけ気ままに無目的に徘徊している後ろめたさもあり、それに多分に照れもあったから、そっけない返事になってしまったが、本心は違います、「うわー、スンゴイ景色だな、これをアイツにみせてやったら感動するだろうな」と幾度も思ったことは確かです。
しかし、日本の男は総じて照れ屋であるし、素直ではないのですから仕方のないことであります。

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