ねぐらは明るいうちに 2
独り旅の時はすべてにおいていい加減で適当なのですが、妻と一緒のときはそうもいきません。せめて安全と思われるねぐらを選択するのは私の努めだと思っているのです。あまりにおかしな場所に宿泊していると警察に職質される場合だってあります。私の行くところはおまわりさんなんてほとんど見かけるところではないので一度も職質なんてされたことはありませんけれども。自転車で旅する人なんかは結構職質されるようであります。
北海道ではほとんどそのような事はないのですが、本州では旅館や民宿を利用しない旅人なんてのは乞食同様に思われてしまうのでしょう。これは仕方のないことだと思っています。
最近は道の駅がどんどんとできてきて、旅はしやすくなってきましたが、寝る場所はできるだけ道の駅でないところを探します。トイレや産直野菜とおみやげを購入する時だけ利用します。道の駅ってのは夜中でも結構出入りがあって煩いものなのです。よほどの事がないかぎりは避けるようにしています。山の上の頂上にある駐車場とか、鄙びた漁村の海の見える駐車場とか、とにかく丁寧に探してみると結構あるものです。
自分でいうのもなんですが、静かで景色が良くてという場所を探すのは天才的だと思っているのです。実際そうやってこれまで探した秘密の場所ってのはたくさんあります。
やはり、そういう場所を探すのは明るいうちに捜さないと見つからないものであります。
暗い時にどうでも良くて泊まったところがとんでもない場所っていう極め付きがもう一つあります。この時は晩ごはんを確か外食したのです。もう時間もかなり遅くなっていました。妻も子どもたちも後ろのベッドで熟睡しています。そんな時独りで運転していてもつまらないのでどこか静かなところに車を寄せて、一杯呑んで寝ることにしました。
結構外は寒くて窓を開けると冷気が容赦なく車内に流れ込んできます。エンジンを掛けぱなしにして酒を呑み始めました。冷えきった空にこぼれ落ちてきそうな満天の星であります。星というのはなんで見る場所によって一つ一つの粒があんなに大きくみえるでしょうか。
満足するほど酔ったのでエンジンを切って、子どもたちのところにいって誘い込まれるように眠りに入りました。
静かな朝です。静かなはずです、そこは大きな村はずれの墓所であったのです。昨夜はまったく気づかなかったのですが墓地の中央を走る道の上だったのであります。別にそれで変な夢をみたとか何か得体の知れないものがでてきたなんてことはなかったので、どうということは無かったのですが、私はすぐにエンジンをかけてそこからそーっと離脱しました。
だってこんなことが家族に知れたら、「お父さんとは二度と旅には行かない」なんて騒がれだす可能性もあるわけであります。こういうことは隠密裡に済ましておくに限ります。
もうひとつは、かなり怖い話なのですが、ここでバラしていいものかどうか迷うものでありますがよしておきましょう。
旅にでてテントや車に泊まるというのは最初は結構不安になるものであります。大概の場合は思い過ごしから自分の不安を不必要に増長させてしまうきらいがあります。私の書いた不適切の言葉でそれらに輪をかけるような事があっては申し訳ありませんからね。
でも、ひと言だけ、「どんな事があっても廃屋には泊まるな!」であります。